MIYATA
脱毛症コラム
2023.09.14 - Thu
医療機関ガイド
保険診療皮膚病診療の実態
当サイトご訪問の皆様、ブログの読者の皆様、こんにちは。ミヤタ メディカル クリニック院長 宮田 晃史です。今回は日本皮膚科学会が作成した円形脱毛症診療ガイドライン 2017の解説をします。
以下に当方でネット上で検索できるメーカー提供の情報と学会提供の資料を主としてまとめました。
そもそもガイドラインって何?
何十年も前、当方が医師になった頃は国内学会が作成した主だった病気の診療ガイドラインは存在しませんでした。質の高い論文を吟味して、妥当な診療内容を見きわめます。それを用いて診療の質を均一化したのがEBMと言われるもので、国内の各学会が有名な疾患のEBM を根拠にガイドラインを作りました。
実際は当時の保険診療で医師が日々従事している診療内容をまな板に乗せて吟味したものです。またupdateされるものが賛否問われることもあります。
ちなみに、
・海外で行われている診療
・保険適応外での診療
については全く主たる話題にはなっていません。
円形脱毛症治療方法とお金の流れ
治療方法 | 学会の推奨度 | 推奨の理由 | 保険適応 | 皮膚科専門医カリキュラムにあるか? | 利益授受者 | |
院外薬局 | 皮膚科既得権益メーカー | |||||
局所免疫療法 | B | 有効な根拠あり | ×(自費) | △(施設による) | × | ○ |
ステロイド局所注射 | B | 有効な根拠あり | ○ | ○ | × | ○ |
ステロイド外用剤 | B | 有効な根拠あり | ○ | ○ | ○ | ○ |
ステロイド内服薬 | C1 | 有効な根拠あり | ○ | ○ | ○ | ○ |
ステロイド大量点滴 | C1 | 有効な根拠あり | ○ | △(施設による) | × | ○ |
抗ヒスタミン薬内服 | C1 | 有効な根拠あり | × | ○ | ○ | ○ |
セファランチン | C1 | 使用実績 | ○ | ○ | ○ | ○ |
グリチルリチン | C1 | 使用実績 | ○ | ○ | ○ | ○ |
塩化カルプロニウム | C1 | 使用実績 | ○ | ○ | ○ | ○ |
ミノキシジル外用 | C1 | 国内未調査 | × | × | ○病院からの斡旋 | × |
冷凍療法 | C1 | 安全だから | × | ○ | × | ○ |
紫外線療法 | C1 | 安全だから | ○ | ○ | × | ○ |
直接偏光近赤外線照射療法 | C1 | 何となく | ○ | × | × | × |
レーザーPDT | C2 | 根拠なし | × | × | × | × |
シクロスポリン | C2 | 根拠なし | × | × | ○ | × |
分子標的薬 | C2 | 根拠なし | × | △(アトピー性皮膚として) | ○ | ○ |
漢方薬 | C2 | 根拠なし | △ | 基本× | ○ | × |
抗うつ薬 | C2 | 根拠なし | × | × | ○ | × |
タクロリムス外用 | C2 | 根拠なし | × | × | ○ | ○ |
プロスタグランジン外用 | C2 | 根拠なし | × | × | ○ | ○ |
ビタミンD外用 | C2 | 根拠なし | × | × | ○ | ○ |
レチノイド外用 | C2 | 根拠なし | × | × | × | × |
催眠療法 | C2 | 根拠なし | × | × | × | × |
心理療法 | C2 | 根拠なし | × | × | × | × |
星状神経節ブロック | C2 | 根拠なし | × | × | × | × |
PRP(成長因子注入) | C2 | 効果あるも、データが少ない自費だから | × | × | × | × |
アロマテラピー | C2 | 根拠なし | × | × | △ | × |
鍼灸治療 | C2 | 根拠なし | × | × | × | × |
かつら | B | × | ○ | × | ○ |
推奨度解説
A:強く推奨する
B:推奨する
C:行ってもよい
D:行わない方がよい
これだとわかりづらいので、こんな感じにまとめました。
皮膚科業界の教育カリキュラムに含まれているかと評価の差を見てみましょう。
教育プログラムに入っているか? | 総数 | ガイドライン上推奨する | ガイドライン上推奨しない |
含まれる | 9 | 9 | 0 |
含まれない | 20 | 5 | 15 |
上記の表で見ると、保険皮膚科医師がやっている診療が質の高い事を証明しています。
当サイト内で述べていますが、質の高い調査がなされていても、局所免疫療法が推奨度Bで、有効率30-40%なのは、どうなのでしょうか?
また局所免疫療法の有効率は2次文書の診療ガイドラインには記載されていません。
C1群の治療薬の添付文書上の有効率が60%前後なのは、どうなのでしょうか?
この薬剤群の有効率も2次文書の診療ガイドラインには記載されていません。
では保険適応外の治療手段はどの様に評価されているのでしょうか?
総数 | ガイドライン上推奨する | ガイドライン上推奨しない | |
保険診療である。 | 9 | 9 | 0 |
自費診療である。 | 20 | 4 | 16 |
保険診療での治療はガイドライン上100%推奨されるが自費に関しては20%程度の項目が推奨されるという事になります。では保険適応のないもので、ガイドライン上推奨される内容を挙げてみます。
・かつら
・凍結療法
・抗ヒスタミン薬
・局所免疫療法
つまり、
・塗る
・処方(販売)したり
・イボの冷凍凝固と同じ処置
は推奨しています。
日々の仕事でやり慣れている簡単な診療と治療は推奨しています。
・免疫抑制剤・精神科の薬といった使い慣れていない薬
・催眠療法、心理療法、アロマ、鍼灸、漢方、PRPといった
皮膚科専門医カリキュラム外の治療は根拠がない、データが少ないという理由で推奨しないとしています。
保険診療のメーカーの利益 | 総数 | ガイドライン上推奨する | ガイドライン上推奨しない |
ある | 16 | 12 | 4 |
ない | 13 | 2 | 11 |
上記3つの表で分かることは、保険診療医師が普段診療していること=メーカーの売上維持=ガイドラインで推奨という事です。
ちなみに、ガイドラインで推奨の理由をよく読むとこんな感じに書いています。
推奨する理由
・セファランチン & フロジン
そんなに効かないけど、今まで使ってきたから。
→有効な証拠ないですけど、大丈夫ですか?
推奨されない理由
・PRP
効果は見込まれるが、データが少ない。
・ミノキシジル
国内では実証されていない
→セファランチンとフロジンは有効なデータないけど使っているのに、PRPとミノキシジルは何故推奨しないのですか?また、根拠がない≓調査されていないという事もありえます。
調査がされていない物はダメなのでしょうか?
このガイドラインは2017年のものなので、将来何らかの改善はなされていくとは思います。それも踏まえて現段階での現実をお伝えしました。
当方は明らかに偏った方針と思います。おそらく他の病気はてまた他の業界も同じような話はあると思います。ですので、患者さんにお伝えします。
皮膚科専門医は円形脱毛症診療に関して、患者さん目線での公平な見聞は持っていません。脱毛症は軽症の場合、結構どこでも治ります。軽症の脱毛症治療は、効果・費用・アクセス・安全性に関してはとても良いと思います。
しかし、抜け毛、重症、治らない、繰り返しは保険の病院回っても治せないことがあります。
だから、保険証を持って病院に行けば大丈夫!ということは全く保証されていません。
しっかり脱毛症を治したい方は、自費体質改善外来の受診をお勧めします。