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2022.07.30 - Sat

医療機関ガイド

医療機関の選び方 その3 -大学病院(脱毛症専門外来含む)-

当ブログ読者の皆様、こんにちは。

これから不定期発信で、ご自身に相応しい医療機関/民間治療院等を選ぶのに必要な情報をお伝えしていきます。

第3弾は、「大学病院皮膚科外来(脱毛症専門外来)」です。

解説

保険診療のみで円形脱毛症治療を行っているグループです。

大学病院の主たる機能は研究と教育なので、最先端の研究をしているのと同時に若い先生の教育機関です。

また、地域医療の観点では地域のクリニック/小規模病院が対応できない病気の治療を行うという、「地域医療の最後の砦」という立ち位置でもあります。

教育という観点では国内の標準的な診療方法を教育するために、日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドラインを根拠として診療の仕方を教えています。

研究という観点ではそこにいる教授のご専門(ご趣味)が脱毛症なら、大なり小あります。

ちなみに国内の大学病院の教授で、脱毛症をご専門としている先生は数人で10人いません。

ですので、殆どの大学病院を最後の砦と思い込んで受診しても、大学病院ならではの治療と言えばオルミエントの様な新製品の免疫抑制剤の教授以下医局員の練習台以上の話はない可能性があります。

話はそれますが、大きな病院のメリットは以下です。

・設備投資が大きい

・各種業者(製薬会社、検査会社、医療機器メーカー)とのコミュニケーション(臨床研究)

・マンパワーが多い(色んな専門の先生、医療スタッフの人数)

それにより、患者さんの受ける恩恵は以下となります。

・24時間問わずの緊急かつ重傷な病気の対応(全身麻酔が必要な手術の年中無休の対応、集中治療室)

・たまたま噛み合ったときの臨床研究の治験に参加できる事

・大型設備とマンパワーが必要な精密検査と治療が必要な病気の診療

では、「重症/難治性脱毛症が上記に当てはまるのか?」というと、どれにも当てはまりません。

ですので大学病院にいっても、免疫抑制剤の話以外にまともな話がなかったという事がありえます。

最近出てきたオルミエントという重症脱毛症でに保険使用が認可された薬剤があります。

この薬剤を処方できる医師を製薬会社は指定しており、医師であれば誰でも処方できる訳ではありません。

しかし、大学病院のみで処方可能とはしていませんので、製薬会社が指定した条件を満たせば街の皮膚科クリニックの先生でも処方できます。

つまり、大学病院に行っても教授のご専門が脱毛症でなければ受診する意味合いが薄いという事になります。

では脱毛症専門外来を受診した場合の話です。

医師の仕事は何科であれ、診療で必ず行う事は投薬治療です。

ですので、ある意味薬屋です。

薬剤師と違うことは、使える薬が多いことと投与量に自己裁量権が与えられていることです。

また投薬(手術)につなげる手段が検査です。

となると医師の治療の進化は薬の開発に相当依存していることになります。

新薬の製薬会社は国内使用認可に必要な臨床試験は医師(医療機関)に委託しており、

新薬のプロモーションは学会でのセミナーや医療機関での教育に現実として委託しています。

開発と審査とプロモーションには大量に費用がかかりますので、

製薬会社はより収益性の高い薬剤の開発に力を入れざるを得なくなります。

収益性の高い薬剤の条件は以下です。

・生命に関わる深刻な問題である事

・患者人口が大量にいること

・治療期間が半永久的である事

例えば成人病は未来の合併症まで含めると上記に当てはまります。

ですので、新薬が沢山出てきます。

抗がん剤も上記にほぼ当てはまります。

では円形脱毛症が上記の条件に当てはまるでしょうか?

嫌な病気でありますが、生命に関わるほどではないです。

患者さんの数は人口の数%ですので、癌や成人病と比べると少ないです。

一度円形脱毛症にかかった患者さんで一生保険診療の皮膚病治療を受け続ける方はごく一部です。

となると、新薬の開発をしても高い収益性を見込むことが難しいという事になります。

それを示唆する現実として、保険診療での円形脱毛症診療の現状を見てみます。

ステロイドの外用剤は皮膚病全般で使用されますので除外します。

円形脱毛症で独特に使用される薬剤は「セファランチン」、「フロジン」の2つです。

最近承認された新薬を除くと、たった2つしかありません。

実は承認された新薬は、すでにリウマチの治療薬として国内で使用されています。

さらに「セファランチン」と「フロジン」の販売開始は1960年代です。

つまり、半世紀以上保険診療で新薬が出てきていないという事になります。

海外で円形脱毛症にすでに使われている薬剤もあるのですが、厚生労働省は承認していません。

最近承認されたオルミエントも円形脱毛症治療のために開発された薬剤でないです。

慢性関節リウマチの治療薬の使い回しです。

ちなみに、薬の値段も1ヶ月分は発売直後で10割負担で15万円前後します。

研究は確かに行われていますが、そこでの開発されたことは男性型脱毛症に応用されている事が多いです。

男性型脱毛症のほうが円形脱毛症よりも収益性が高いので多くの起業が参入して投資をしているからです。

ここまでは話がそれましたが、とても大切な内容なので、あえてお伝えしました。

大学病院でやっている治療内容は以下となります。

1 投薬治療により、免疫異常に伴う毛包周囲の炎症反応の改善

局所免疫療法、オルミエント、(デュピクセント)、ステロイドパルス療法、ステロイド内服

がこれらに当たります。

2 局所療法(作用機序不明)

3紫外線療法

4その他各大学の研究/治験

メリット

1国内最先端の実験(臨床治験)をやっているかもしれない

これは事前に確認が必要です。

重症脱毛症の治療手段の有効率は、大体30-40%です。これを超えるものがあると良いです。

2どんなに重症な脱毛症でもとりあえずは受け入れてくれる

教育機関ですので、若い先生のトレーニングのために断られることはないでしょう。

しかし、治るかどうかは別件です。

ただし、治らないとも言い切れないです。

大学病院以外の医療機関(クリニック/診療所)は出来ない仕事は他に送るという形で断ります、普通。

3合併している内臓疾患を調べてくれる(希望者のみ)

円形脱毛症には時々内臓の病気が合併すると言われています。古い報告ですと8% の確率で甲状腺疾患(殆どが橋本病)、ほかに感染症(梅毒)や膠原病が言われています。内臓の病気は置いておくと大変なことになりかねないので、予め調べておくことは大切です。

4治療手段が楽である。

当院でやっている診療と比べると、

・1錠飲むだけ

・塗るだけ

・点滴するだけ

とお手軽です。

5新製品の免疫抑制剤を使わなければ安価

ただし、これなら街の皮膚科専門クリニック行った方がアクセスは軽いと思います。

6誰がやっても(どの先生が治療しても)、腕の良し悪しのバラつきがない (少ない)。

保険診療と診療ガイドラインによって治療内容と投薬のさじ加減が決まっていますので、誰が治療しても結果の差がほぼ出ません。

7同じ専門の先生が沢山いる

どの先生が出てきても上記の理由と部署(医局)内での情報交換がなされますので、

仮に出てきた先生の感じが悪くても、交換してもらえばそこの大学病院に通院し続ける事が出来る。

デメリット

1ガイドライン通りの治療なので、どこにやる事が同じ

教授の専門が脱毛症でなかった場合、治療に関する臨床研究をやっていなければ、

ガイドライン通りの診療のみになる可能性が高い

2重症の脱毛症治療の経験が乏しい時もありうる

専門外来の看板を出していても、 脱毛症が専門の教授が出てこなかったら経験豊かな医師が出てくる保証がなくなります。

本当に専門なら朝から晩まで脱毛症の診療のみする事になっても良いのですが、(特に田舎だと)地域医療からの要求上そういう事はできません。

3対症療法以上のことはやっていない。

日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドラインで有効と判断されて行われている保険診療の治療手段は原則投薬治療による対症療法です。

仮に病状が改善したとしても、治療を止めれば元に戻りかねないです。

原因からの治療と再発対策はガイドラインでは全く述べられていませんので、治療の際の話題にすらなりません。

3重症例の治療成績は厳しい

基本的には脱毛している部位の炎症改善に伴う発毛治療ですので、頭髪以外に病状が広がると厳しいです。

頭髪以外の脱毛、髪型が変わる位の脱毛、抜け毛がある場合(進行期)では治療成績が下がります。

私見としてこの病気は全身病なのに、頭髪以外の病変があるケースに頭部だけ局所免疫療法を行っている話を聴きます。意味不明です。

4軽症の抜け毛(進行期)の安全な治療方法が存在しない

脱毛面積が広くなると入院ステロイドパルス点滴療法がありますが、面積が狭いと抜け毛の程度関係なく、治療方法が存在しません。

5内臓疾患を見つけてくれるだけ

皮膚科はある意味見張り台みたいな仕事の一面があります。臓器別縦割り診療制度なのでしょうがないのですが、病気が見つかると内科に紹介するだけです。内臓の病気が治ったとしても発毛するかは別件の時もあります。

6原因の検査と原因からの治療は基本的には行っていない

皮膚科業界では円形脱毛症の原因探しと治療は元々行う検査と治療が存在しません。

最近鉄分や亜鉛の不足を脱毛症の原因として治療している先生もいますが、当方から見るとそれでは不十分です。

7待ち時間が長い/話を聞いてくれない

クリニックは難治なケースは大学病院に送ります。

保険診療の外来受診料は異常に安いので、外来に大量に患者さんが来院されます。

待ち時間の緩和の為に、だいたい診療は5分以内と推奨される事があります。

皮膚科診療はただでさえ入院診療が必要になる病気が少なく、外来診療がほぼ全てになり、外来収益は非常に少ないです。1人の患者さんに多くの時間をかけると収益の悪化と苦情で医師は苦しい立場になりかねないです。

8診療が物足りない(説明が足りない/投薬するしかやる事がない)

医学的な研究が進歩したとしても、研究されている内容は患者さんから見たら非常に理解が難しいものだらけです。また診療は見て処方するだけで殆どです。他の診療科のように検査が殆どないため、物足りなさが残りかねないです。 

9投薬量に上限があるため、治らないケースが残る

例え、重症脱毛症でも新薬の投与量に上限がありますので、一定数治らないケースが必ず発生します。

まとめると以下の感じになります。

大学病院(脱毛症専門外来)参考当院
 皮膚科保険・投薬治療
皮膚科・保険処置
(ステロイド注射/凍結療法)
皮膚科保険・光線療法○(エキシマライト)
漢方治療×
内臓疾患検索△ (希望者)○ (自費外来)
内臓疾患治療×△ (疾患と程度次第)
原因検索/原因治療△ (ほぼやっていない)○ (自費)
再発対策△ (ほぼやっていない)○ (自費)
抜け毛治療△(重症だと対応)○ (自費)
・休止期脱毛症/
・びまん性脱毛症/
・FPHL
・男女問わずの薄毛
△(あっても休止期脱毛症のみ)
費用新薬なければ安価希望と病状次第

医療機関受診費用

保険診療は政府が定めた金額(公定価格)で費用請求となり、また自己負担額で調整されると安価に設定されています。

3割負担受診料金(税込)/回 600円~4000円前後(血液検査をした場合)

探し方

近所の皮膚科クリニックで紹介状を書いてもらいます。

紹介状なしでも受診できますが、費用が高くなるはずです。

注意 & アドバイス

・大きな病院に行ったから、教授の外来を受診したからと言って特別な治療があるわけもない時があります。

・保険診療で治療した場合どこにいってもやる事は重症脱毛症への新薬治療でなければ原則同じです。

 ・インターネット(グーグル)の口コミを見て判断してはいけません。仮に感じの悪い思いをしても、感じの悪い人が入れ替わる事はざらにあります。待ち時間が長くて低評価とされていますが、大学病院はそういう所です。また、大きな病院の事務方でカスタマーサービスに力を入れるような所は見たことがありません。

・大学病院のサイトはgoogleの評価システム上、自然検索で上位に上がるようになっています。いち早く目についたからといって、高度な治療をしている保証は全くありません。

・投薬治療による対症療法での原状復帰以上の医療の結果を求めて、大学病院に行っても時間の無駄です。

・一部カツラ屋が専門情報サイトを作っていますが、これはある意味まとめサイトみたいなもので、そこに掲載されているからといって保険診療だと特別な治療がある訳でもないです。